2026/11/02

「育成キャンセル界隈」とは?部下を育てることを諦める上司が生まれる5つの原因と対策

「育成キャンセル界隈」とは?部下を育てることを諦める上司が生まれる5つの原因と対策

「若手が育たない」のか。それとも「若手を育てることを諦めている」のか。

近年、職場の人材育成をめぐって「育成キャンセル界隈」という言葉が注目されています。

「何度教えても改善されない」

「厳しく注意するとパワハラと言われそう」

「自分の仕事で手いっぱいで、部下の育成まで手が回らない」

こうした悩みを抱え、部下や後輩への指導を控える管理職や先輩社員がいる一方で、若手社員からは「もっと具体的に教えてほしい」という声もあります。

なぜ、育てる側と育てられる側の間に、このようなすれ違いが生まれるのでしょうか。

大阪を拠点に企業研修を展開する株式会社ファーストステップでは、「守体性から主体性へ」という考え方を軸に、自ら考え、行動できる人財の育成を重視しています。

今回は、育成キャンセル界隈が注目される背景を調査データから読み解き、管理職・人事担当者が取り組みたい5つの対策をご紹介します。


1.「育成キャンセル界隈」とは?

「育成キャンセル界隈」とは、上司や先輩社員が部下・後輩への指導や育成を避けたり、必要な関わりを控えたりする傾向を指す俗称です。

もともと「〇〇キャンセル界隈」という表現は、特定の行動を避ける人々や傾向を表す言葉として使われています。

職場における育成キャンセルでは、例えば次のような行動が考えられます。

  • ミスに気づいても、必要な指摘をしない
  • 改善が見られなくても、追加の指導を諦める
  • 部下から質問されるまで仕事を教えない
  • ハラスメントを恐れ、当たり障りのない会話しかしない
  • 育成に時間を使わず、自分で仕事を処理してしまう

もちろん、部下の自主性を尊重して仕事を任せることと、育成を放棄することは異なります。

重要なのは、部下の成長に必要な支援やフィードバックが行われているかどうかです。


2.管理職の61.2%が育成キャンセルを経験?調査から見える実態

2026年8月、株式会社ライトワークスが全国の20代若手社員443名と、30〜50代の管理職443名、合計886名を対象とした「ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査」を公表しました。

同調査では、管理職の61.2%が育成キャンセルを経験したと回答しています。

内訳は、意識的に行った人が18.1%、気づけばそうなっていた人が43.1%でした。

さらに、育成を遠慮・断念した理由として、次の結果が報告されています。

育成を遠慮・断念した理由回答割合
何度指導しても改善が見られず、効果が見込めなかった55.4%
ハラスメントと受け取られるリスクが高いと感じた34.0%

一方、若手社員の78.2%は、ハラスメントに当たらない範囲で率直な指導やフィードバックを求めていると回答しています。

つまり、管理職が指導をためらっている一方で、若手社員の多くは適切な指導を求めているのです。

ただし、この結果は特定の回答者を対象とした意識調査であり、日本のすべての管理職にそのまま当てはまるものではありません。

それでも、育成する側と育成される側の認識にすれ違いがあることを考えるうえで、重要な資料といえるでしょう。

参考資料: 株式会社ライトワークス「ハラスメントと育成キャンセルに関する意識調査」(2026年8月6日)


3.育成キャンセルが起こる5つの原因

① ハラスメントへの不安から、指導をためらう

管理職にとって、部下への適切な指導とハラスメントの違いを理解することは重要です。

しかし、どのように伝えればよいのか分からず、必要な注意まで避けてしまうケースが考えられます。

ここで大切なのは、指導すること自体が問題なのではなく、指導の目的や方法が重要であるという視点です。

人格を否定する発言や感情的な叱責を避けながら、業務上必要な改善点を具体的に伝える力が求められます。

② 何度教えても改善されず、指導疲れが生じる

「前にも説明したのに、また同じミスをする」

こうした経験が続けば、指導する側が疲弊することもあるでしょう。

しかし、ここで確認したいのは、「教えたこと」と「相手が理解し、実行できること」は違うという点です。

説明を受けただけでは、実際の行動につながらない場合があります。

理解度を確認し、実践の機会を設け、必要なフィードバックを行うことが重要です。

③ プレイングマネージャーの業務負荷が大きい

管理職自身が成果を求められながら、部下の育成も担っている職場は少なくありません。

目の前の業務に追われ、育成に必要な時間を確保できなければ、部下への関わりは後回しになりがちです。

これは管理職個人の意欲だけで解決できる問題ではありません。

組織として、育成時間の確保や役割分担を考える必要があります。

④ 部下の主体性を引き出す指導方法が分からない

部下育成には、知識を教える力だけでなく、相手に考えさせる力も必要です。

しかし、管理職自身が「上司の指示に従うこと」を中心とした指導を受けてきた場合、部下の主体性を引き出す関わり方に戸惑うこともあるでしょう。

すべてを教え込むのでも、何も教えずに任せるのでもない。

部下の習熟度に応じて、教える・問いかける・任せるを使い分けることが重要です。

⑤ 育成が管理職任せになっている

部下が育たない原因を、直属の上司だけに求めていないでしょうか。

育成方針が曖昧で、指導方法も個人任せ。育成状況を確認する仕組みもない。

そのような環境では、管理職によって指導の質や頻度に差が生じやすくなります。

育成を管理職個人の努力だけに依存させず、組織として支える仕組みが必要です。


4.育成キャンセルを防ぐ5つの対策

対策① 指導とハラスメントの違いを理解する

管理職が安心して部下育成に取り組むためには、適切な指導方法を学ぶことが重要です。

業務上の必要性や相当性を踏まえ、人格ではなく具体的な行動に焦点を当ててフィードバックします。

例えば、

「なんでこんなこともできないの?」

と伝えるのではなく、

「今回の対応では、この確認が抜けていたね。次回はどのように確認しようか?」

と、事実と改善行動を具体的に伝えます。

なお、パワーハラスメントに該当するかどうかは、発言の一部分だけではなく、業務上の必要性や相当性、状況などを踏まえて判断されます。

対策② 「教える」と「考えさせる」を使い分ける

新人や経験の浅い社員には、具体的な手順を教えることが必要です。

一方、基本を理解している社員に対しては、問いかけによって考える機会を設けることも有効です。

例えば、

「この仕事の目的は何だと思う?」

「どこで判断に迷った?」

「次に同じ場面があったら、どう対応できそう?」

といった質問です。

ただし、本人が知らないことまで自力で考えさせるのは適切ではありません。

必要な知識を教えたうえで、少しずつ判断や工夫を任せていくことが大切です。

対策③ 1on1を育成の機会として活用する

1on1ミーティングを、単なる業務進捗の確認で終わらせていないでしょうか。

部下が感じている難しさや成長実感、今後挑戦したいことを確認する機会として活用することが重要です。

例えば、次の3つの質問を取り入れる方法があります。

  • 最近、仕事でうまくいったことは何か?
  • 今、難しいと感じていることは何か?
  • 次の1週間で、どのような行動に取り組むか?

短時間であっても、継続的な対話と振り返りを行うことで、育成の状況を把握しやすくなります。

対策④ 管理職自身の育成スキルを高める

管理職に昇進したからといって、自然に部下育成ができるようになるわけではありません。

プレイヤーとして成果を出す力と、部下の成長を支援する力は異なります。

そのため、管理職研修では、役割認識、傾聴、承認、フィードバック、1on1、支援型リーダーシップなどを実践的に学ぶことが重要です。

知識を学ぶだけでなく、実際の職場で起こり得るケースを使い、指導方法を練習することが求められます。

対策⑤ 育成を組織全体の仕組みにする

管理職一人に育成を任せきりにしないことも重要です。

例えば、育成目標の共有、定期的な1on1、管理職同士の情報交換、育成状況の振り返りなどが考えられます。

また、管理職自身が指導方法に迷った際に相談できる環境を整えることも必要です。

部下の育成を支援するためには、管理職自身を支援する仕組みも欠かせません。


5.ファーストステップが考える「育成キャンセル」を防ぐリーダーシップ

ファーストステップでは、「守体性から主体性へ」という考え方を大切にしています。

守体性とは、与えられた役割や指示を守ることが中心となり、自ら考えて行動する意識が十分に育っていない状態を表す、当社独自の考え方です。

もちろん、ルールや指示を守ることは組織で働くうえで欠かせません。

しかし、それだけでは、変化する状況に応じて自ら考え、行動する人財の育成にはつながりにくくなります。

そこで重要になるのが、支援型リーダーシップです。

支援型リーダーシップでは、管理職が一方的に指示するだけでなく、部下の状況を理解し、必要な支援や問いかけを通じて成長を促します。

例えば、部下が失敗したとき。

ただ叱責するのでも、何も言わずに見過ごすのでもなく、

「何が起こったのか」

「どこに改善の余地があるのか」

「次はどのように行動するのか」

を一緒に整理します。

必要な指導を行いながら、本人が考え、次の行動を選択できるように支援するのです。

ここで忘れてはならないのは、主体性が求められるのは部下だけではないということです。

管理職自身も、従来の指導方法に固執するのではなく、部下や職場の状況に応じて関わり方を変えていく必要があります。


6.育成キャンセルを防ぐために、企業研修でできること

ファーストステップでは、若手社員から中堅社員、管理職まで、階層ごとの役割や課題に応じた企業研修を展開しています。

特に管理職向けの「組織を動かすリーダー育成プログラム」では、管理職としての役割認識、部下とのコミュニケーション、主体性を引き出す関わり方などを重視しています。

また、若手社員向けの「自律型人財育成プログラム」では、仕事の意味づけや役割認識、思考習慣、コミュニケーション、行動計画などを通じて、自ら考えて行動する土台づくりを目指します。

育成キャンセルの問題は、管理職だけ、若手社員だけを変えれば解決するものではありません。

育てる側と育てられる側の双方が、仕事への向き合い方や関わり方を見直すことが重要です。

そして、研修で得た学びを職場で実践できるよう、アクションプランや継続的な振り返りにつなげることも大切にしています。


まとめ|部下の育成をキャンセルする前に、育成の方法をアップデートしよう

育成キャンセル界隈という言葉の背景には、ハラスメントへの不安、指導疲れ、業務負荷、育成スキルの不足、組織的な支援の不足など、さまざまな課題があります。

だからこそ、管理職に「もっと部下を育てなさい」と求めるだけでは不十分です。

必要なのは、管理職が安心して適切な指導を行える環境と、部下の主体性を引き出す育成方法です。

育成を諦めるのではなく、育成のやり方を変える。

これからの管理職に求められるのは、すべてを教え込むことでも、何も言わずに見守ることでもありません。

必要なことを教え、相手の考えを引き出し、成長を支援することです。

株式会社ファーストステップでは、大阪を拠点に、管理職研修・若手社員研修・主体性向上研修など、企業ごとの育成課題に応じた研修をご提案しています。

「部下育成が管理職任せになっている」

「若手社員の主体性を高めたい」

「管理職の指導力を強化したい」

そのような課題をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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