片野メソッド第6回 管理職に必要なのは、部下を管理する力ではなく、「自分自身をマネジメントする力」
― 部下を変えようとする前に、自分の関わり方を変える ―
「部下が動かない」のは、本当に部下だけの問題なのか?
管理職研修やマネジメント研修で、企業の管理職の方々からよくいただく相談があります。
「部下が指示しないと動かない」
「何度言っても同じミスをする」
「もっと主体的に仕事をしてほしい」
「部下のモチベーションを上げたい」
管理職として、こう感じることは決して珍しいことではありません。
しかし、私はそこで一つの問いを投げかけます。
「その部下が今の状態になっていることに、上司である自分の関わり方は、本当に一切影響していないでしょうか?」
少し厳しい問いかもしれません。
でも、ここにマネジメントの本質があります。
部下を変えようとする前に、自分自身の関わり方を見直す。
これが、私が考えるセルフマネジメント型のマネジメントです。
部下に「主体性」を求める前に、上司自身が考える
例えば、部下から、
「どうしたらいいですか?」
と相談されたとします。
そのとき、
「それなら、こうすればいいよ」
とすぐに答える。
もちろん、上司としては部下を助けているつもりです。
しかし、これを繰り返していると、部下は少しずつ、
「困ったら上司に聞けばいい」
と考えるようになります。
そして上司は、
「どうして自分で考えないんだ」
と不満を感じる。
これは、企業の現場で起こりやすい典型的なマネジメントのジレンマです。
だからこそ、答えをすぐに渡すのではなく、
「あなたはどう考える?」
「選択肢は何がある?」
「もし自分が責任者だったら、どう判断する?」
と問い返す。
答えを与えるのではなく、考える機会を与える。
この関わり方の変化が、部下の主体性を育てていきます。
「守体性」をつくっているのは誰なのか
私は、人材育成において「守体性から主体性へ」という考え方を大切にしています。
守体性とは、誰かに守ってもらうことを前提とし、自分で考え、選択し、行動することを避けてしまう状態です。
もちろん、本人だけが原因とは限りません。
上司や組織の関わり方によって、守体性が強化されることもあります。
何でも上司が答える。
失敗しないように細かく指示する。
部下が困る前に先回りして助ける。
最終判断をすべて上司がする。
これを続ければ、部下が自分で考える機会は減っていきます。
そして上司は、
「うちの部下は主体性がない」
と言う。
これは、少し皮肉な話です。
主体性のない部下をつくっているのは、主体性を求めている上司自身かもしれない。
だからこそ、管理職自身のセルフマネジメントが重要なのです。
研修で終わらせない。現場で「できる」まで支援する
私たちが企業研修を行う際に、大切にしているのが、「研修を実施して終わりにしない」という考え方です。
例えば、JAでの営業人材育成では、営業研修を実施するだけではなく、その後の営業の型づくりに関する資材作成のアドバイスや、実際の営業同行まで行っています。
なぜそこまでやるのか。
理由はシンプルです。
研修で「分かった」と、現場で「できる」は違うからです。
研修当日は、
「なるほど」
「勉強になった」
と思っても、職場に戻れば今までの習慣に戻ってしまうことがあります。
だからこそ、学んだことを現場で実践し、うまくいかなければ修正する。
そのプロセスまで支援することが、人材育成には必要だと考えています。
これは管理職研修でも同じです。
「部下に問いかけましょう」と教えるだけではなく、
実際にどんな場面で問いかけるのか。
どんな言葉を使うのか。
どこまで任せるのか。
失敗したときにどう関わるのか。
そうした現場レベルまで落とし込むことが、行動変容につながります。
管理職自身の「感情」もマネジメントする
もう一つ、管理職にとって重要なのが、自分自身の感情との向き合い方です。
管理職も人間です。
忙しい日もある。
余裕がない日もある。
思うように成果が出ず、イライラすることもある。
しかし、上司の感情は想像以上に組織へ伝わります。
機嫌が良い日は優しい。
機嫌が悪い日は言葉が強くなる。
そんな状態では、部下は、
「今日は話しかけない方がいい」
と考えるようになります。
報告や相談が遅れれば、小さな問題が大きな問題になることもあります。
だからこそ、管理職には「自分の状態をマネジメントする力」が必要です。
怒らないことが重要なのではありません。
怒りや苛立ちを感じたときに、「その感情のまま行動するのか、それとも自分で選択するのか」が重要なのです。
感情をなくすのではなく、感情に支配されない。
これもセルフマネジメントです。
管理職研修で、私が大切にしている「問い」
私の研修では、一方的に知識を伝えるだけではなく、受講者自身に問いを立ててもらいます。
例えば、
「あなたは部下に何を求めていますか?」
「その行動を、自分自身はできていますか?」
「部下が失敗したとき、あなたはどんな言葉をかけていますか?」
「部下が自分で考える前に、答えを教えていませんか?」
「部下に主体性を求めながら、自分がすべて決めていませんか?」
そして、
「部下を変えるために、あなた自身が変えられることは何ですか?」
と問いかけます。
人から与えられた答えは、行動につながりにくい。
しかし、自分自身で考え、自分自身で導き出した答えには、「自分が決めた」という納得感があります。
だから私は、研修を「答えをもらう場所」ではなく、「自分自身の答えを見つける場所」にしたいと考えています。
「管理する」から「自律を支援する」へ
マネジメントという言葉には、「管理する」というイメージがあります。
しかし、これからの組織に必要なのは、すべてを細かく管理することだけではありません。
部下が自分で考える。
自分で判断する。
自分で行動する。
そして、失敗から学び、自分で成長していく。
つまり、
「管理するマネージャー」から「自律を支援するマネージャー」へ。
この転換が、自律型人材育成には欠かせません。
上司がすべてを決める組織では、上司がいなければ仕事が止まります。
一方、一人ひとりが考え、判断し、行動できる組織では、上司が細かく指示を出さなくても仕事が前に進みます。
管理職の役割は、「自分がいなくても動ける人を育てること」と言ってもいいかもしれません。
まず変わるべきは「自分」
私は研修の中で、管理職の方にこう問いかけます。
「部下を変えるために、あなたが変えられることは何ですか?」
部下の性格は変えられません。
過去も変えられません。
他人の価値観も、簡単には変えられません。
でも、自分の言葉は変えられる。
自分の態度は変えられる。
自分の問いかけは変えられる。
自分の関わり方は変えられる。
だから、マネジメントのスタート地点は「部下」ではなく「自分」なのです。
管理職が変われば、組織が変わる
管理職が一つの行動を変える。
部下にすぐ答えを教えるのではなく、問いかける。
失敗を責めるのではなく、次の行動を一緒に考える。
自分の感情を部下にぶつけるのではなく、自分自身をマネジメントする。
そして、部下を信じて任せる。
待つ。
問いかける。
その小さな変化が、部下の行動を変えていきます。
そして、部下が主体的に動くようになれば、管理職自身の仕事も変わります。
「部下を管理する時間」が減り、
「組織を成長させる時間」が増える。
これこそが、自律型組織への第一歩です。
人を変えるのではなく、「人が変わる環境」をつくる
管理職の仕事は、部下を自分の思い通りに動かすことではありません。
部下が自ら考え、自ら選び、自ら行動できる環境をつくることです。
そのためには、まず管理職自身が変わる。
自分をマネジメントする。
自分の感情を扱う。
自分の言葉を選ぶ。
自分の関わり方を変える。
そして、部下の主体性を信じて、任せる。
それが、自律型人材を育てるマネジメントです。
部下を変えようとする前に、自分が変わる。
その瞬間から、組織は変わり始めます。
管理職が変わる。
部下が変わる。
組織が変わる。
そして、その先に、自律型人材が活躍する組織が生まれていく。
それが、株式会社ファーストステップが考える「人を育てるマネジメント」です。
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